年収アップ=成功の罠。手取りと福利厚生で選ぶ「実質年収」というキャリア戦略

person holding us dollar bills年収アップと実質年収
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  1. はじめに
  2. 第1章|なぜ年収で転職を決めると失敗するのか
    1. 1-1 年収アップ=成功という思い込み
    2. 1-2 額面年収の“錯覚”
    3. 1-3 社宅制度の期間終了が教えてくれたこと
    4. 1-4 年収比較の罠
    5. 1-5 年収思考が生む3つの落とし穴
    6. 1-6 なぜ人は年収に振り回されるのか
    7. 1-7 本当に考えるべき問い
    8. 1-8 本書で伝えたいこと
  3. 第2章|実質年収とは何か
    1. 2-1 実質年収とは「本当に受け取っている価値」
    2. 2-2 わかりやすい例で考えてみる
    3. 2-3 実質年収は4つに分けられる
    4. 2-4 なぜ実質年収が大切なのか
    5. 2-5 実質年収は“人生の設計図”になる
  4. 第3章|見落とされがちな9つの要素
    1. 3-1 家賃補助
    2. 3-2 社宅制度
    3. 3-3 企業型確定拠出年金
    4. 3-4 持株会奨励金
    5. 3-5 みなし残業
    6. 3-6 リモート可
    7. 3-7 交通費
    8. 3-8 昼食補助
    9. 3-9 年間休日
  5. 第4章|実質年収の簡易計算方法
    1. ステップ1:まずは額面年収を書く
    2. ステップ2:プラスになるものを足す
    3. ステップ3:マイナスになるものを考える
    4. ステップ4:通勤時間も計算してみる
  6. 第5章|実質年収で転職戦略を組み立てる
    1. 5-1 伸びる業界に入る
    2. 5-2 市場価値を上げる要素を持つ
    3. 5-3 上がりきる前に動く
    4. 5-4 実質年収で会社を選ぶ
    5. 5-5 未経験からでも可能か?
    6. 5-6 実質年収思考は武器になる
  7. 第6章|税金と社会保険を考慮した実質年収
    1. 6-1 年収が上がっても、手取りは比例しない
    2. 6-2 社会保険料は“静かに効いてくる”
    3. 6-3 税金を考慮した比較の考え方
    4. 6-4 手取り思考に切り替える
    5. 6-5 実質年収は“税引き後”で考える
    6. 6-6 年収アップの落とし穴
  8. 第7章|共働き世帯の実質年収設計
    1. 7-1 世帯年収は「足し算」ではない
    2. 7-2 フルタイムか、時短か
    3. 7-3 ケース|世帯年収1,000万円 vs 920万円、どちらが豊か?
    4. 7-4 片方の福利厚生を最大活用する
    5. 7-5 扶養という視点
    6. 7-6 世帯で考えると“攻め方”が変わる
  9. 第8章|地方移住という選択肢 〜収入を上げずに実質年収を上げる〜
    1. 8-1 同じ年収でも、生活はまったく違う
    2. 8-2 リモートワークが生んだ構造変化
    3. 8-3 地方移住のリアルな数字
    4. 8-4 地方移住のメリット・デメリット
    5. 8-5 地方移住は“効率最大化”の戦略
  10. 最終章|お金ではなく「構造」でキャリアを選ぶ
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はじめに

私は32歳の時に、未経験からIT業界に転職し、年収を上げることに成功しました。最初の頃は、とにかく「年収アップ」が正義だと思っていました。ですが、あるとき気づいたのです。額面年収が上がっても、必ずしも豊かになるとは限らないということに。

きっかけは、自社の社宅制度の期間満了でした。給料は変わらないのに、家賃補助がなくなるだけで実質的には“減給”と同じ状態になったのです。そこで初めて、「本当の年収とは何だろう?」と考えました。家賃補助やみなし残業、企業型確定拠出年金、年間休日数――会社から受け取っている価値は、給与明細の数字だけでは測れません。

額面ではなく、総合的な“経済価値”で判断する。私はこの考え方を「実質年収」と呼ぶようになりました。この記事では、私自身の経験と試行錯誤をもとに、転職やキャリア選択で後悔しないための、一つの視点をまとめています。年収という数字に振り回されるのではなく、構造を見て選べる人が増えてほしい。そんな思いで、この記事を書きました。

第1章|なぜ年収で転職を決めると失敗するのか

1-1 年収アップ=成功という思い込み

多くの人は転職を考えるとき、必ず「年収がいくら上がるか」を基準にすると思います。50万円アップや100万円アップ。この数字だけを見ると、前に進んだように感じます。私もそうでしたからよくわかります。未経験からIT業界に入り、少しずつ年収が上がっていくことが自分の成長の証だと思っていました。しかし、あるとき気づいてしまったのです。「年収が上がる=豊かになる」ではない。ここに大きな落とし穴がありました。

1-2 額面年収の“錯覚”

求人票に書いてある年収は、あくまで“総支給額”です。そこには固定残業代(みなし残業)、各種手当、賞与の想定額が含まれています。さらに言えば、税金や社会保険料が引かれる前の数字です。つまり、あなたが自由に使えるお金ではないのです。「年収600万円」という言葉は強いですよね。でも実際に手元に残る金額や、働く時間、生活コストを考えると、イメージとは違う現実が見えてきます。

1-3 社宅制度の期間終了が教えてくれたこと

私が本当に危機感を持ったのは、社宅制度の期間終了直前です。私は、地方から東京の企業へ転職したため、会社が借り上げ社宅を用意してくれました。期間は4年。最初の2年は独身だったため、家賃8万円の1ルームアパートに、自己負担額1万円で住むことができていました。毎月7万円浮いていたことになります。

その後、幸いなことに結婚することができ、社宅制度が変更となりました。期間は最初の社宅制度利用日より4年(残り2年の状態)で、2人暮らしの場合は1LDK、家賃は15万円ほどで自分の好きな部屋を契約できます。家賃の自己負担額は2割。すなわち、毎月3万円の負担のみで東京23区内に住むことができていました。この会社のいいところは、敷金礼金などの初期費用と、引っ越しにかかる費用もすべて出してくれたところです。初期費用65万円、引っ越し費用夫婦合わせて20万円で、合計85万円を会社が負担してくれていました。

そんな生活も、社宅制度期間終了により、終わりを迎えることになります。給料は変わらない。肩書きも変わらない。でも、家賃補助がなくなる。それだけで、年間100万円以上の負担増です。この瞬間に私は気づきました。「会社から受け取っている価値は、給与明細の数字だけではない」と。それは実質的な減給でした。でも額面年収は同じ。この“ズレ”こそが問題だったのです。

1-4 年収比較の罠

仮に、転職したい企業が2社あったとします。 ・A社:年収600万円(みなし残業代40時間分込み) ・B社:年収550万円(残業ほぼなし) 数字だけ見るとA社のほうが魅力的ですよね。しかし、年間残業時間、年間休日数、福利厚生、将来資産形成制度まで含めて考えると、本当に有利なのはどちらでしょうか。年収は“単体”で見るものではありません。構造で見るものなのです。

1-5 年収思考が生む3つの落とし穴

年収だけで判断すると、次の3つの落とし穴にハマることになります。 ① 時間を失う:残業が増え、自由時間が減る。時給換算するとむしろ下がっていることもあります。 ② 将来の積み上げを失う:企業型確定拠出年金や退職金がない会社を選ぶと、10年後に大きな差が出ます。 ③ 判断軸がブレる:「今より高いかどうか」だけが基準になり、長期的なキャリア設計ができなくなります。結果、転職を繰り返す“年収ジャンプ思考”になります。しかしそのジャンプは、実は横移動か、場合によっては後退となっているのです。

1-6 なぜ人は年収に振り回されるのか

友達に転職したことを伝えると、みんな口をそろえて「年収上がった?」と聞いてきます。なぜみんなそんなに年収が気になるのでしょうか。理由はシンプルで、“年収”はわかりやすいからです。一つの数字で優劣が決まるように見えてしまうからです。でも実際のキャリアは、労働時間、税制、福利厚生、リスク、将来性などが複雑に絡み合っています。にもかかわらず、私たちは“年収”という一つの数字に安心してしまう。ここに失敗の種があるのです。

1-7 本当に考えるべき問い

ここで一度、問いを変えてみてください。「年収はいくらか?」ではなく、「この会社で3年後どうなっているか?」「福利厚生は将来にどう影響するか?」「自分の時間は増えるのか減るのか?」この問いに答えられる人は少ない。なぜなら、学校でも会社でも、誰も“実質年収”を教えてくれないからです。だからこそ、次章で定義する考え方が必要になります。年収を見るのではなく、構造を見る。その第一歩が、『実質年収』という視点です。

1-8 本書で伝えたいこと

本書で伝えたいのは、「年収を上げるな」ということではありません。「見る視点を変えよう」ということです。額面ではなく、総合的な経済価値で判断する。この考え方が『実質年収』というものです。次章では、この実質年収とは何かを具体的に整理していきます。

第2章|実質年収とは何か

2-1 実質年収とは「本当に受け取っている価値」

実質年収を一言で言うと、あなたが会社から受け取っている“本当の価値”の合計です。ここで大事なのは「給料」ではなく「価値」という言葉です。多くの人は、年収=会社からもらうお金だと思っていると思います。もちろんそれは間違いではありません。でもそれは一部でしかないのです。例えば、家賃補助、社宅、企業型確定拠出年金、交通費、昼食補助などもすべて、あなたが会社から受け取っている価値です。もし会社が何も出してくれなければ、自分で払う必要があるお金です。つまり、実質年収とは「現金+会社が肩代わりしてくれているお金」のことなのです。

2-2 わかりやすい例で考えてみる

少し簡単な例で考えてみましょう。

・Aさん:年収500万円、家賃補助なし

・Bさん:年収450万円、家賃補助が月5万円

Bさんは一見、年収が低く見えます。でも、家賃補助が月5万円あると、年間60万円分、会社が負担してくれていることになります。つまりBさんの“実質的な価値”は450万円+60万円=510万円になります。数字だけを見るとAさんの方が上ですが、実質ではBさんの方が上になる可能性があるのです。これが実質年収という考え方です。

2-3 実質年収は4つに分けられる

実質年収は、わかりやすく言うと、4つの箱に分けることができます。

現金収入:基本給、賞与、手当などのいわゆる「年収〇〇万円」と呼ばれる部分。

非課税・補助の価値:家賃補助や交通費などのこと。税金がかからないケースも多いため価値が高い。

将来の資産になるもの:企業型確定拠出年金や退職金、持株会など。

時間の価値:みなし残業、年間休日数、残業時間、リモートワークの可否など。時間は取り戻せない貴重な資産です。

2-4 なぜ実質年収が大切なのか

転職で失敗する多くの人は、現金収入だけを見て他の価値を考えないパターンに陥ります。でも本当は「現金+補助+将来資産+時間」この合計で判断すべきなのです。実質年収で考えると、「年収が低い=悪い会社」とは限らないことがわかります。逆に、「年収が高い=良い会社」とも限らないのです。

2-5 実質年収は“人生の設計図”になる

実質年収という考え方を持つと、転職の基準となる軸が変わり、短期だけでなく長期で考えられるようになります。これは単なる計算ではなく、人生設計の視点です。次章では、見落とされがちな具体的な要素を一つずつ整理していきます。

第3章|見落とされがちな9つの要素

実質年収を考えるとき、多くの人が見ているのは「基本給」だけです。しかし実際には、会社から受け取っている価値はもっとたくさんあります。ここでは、特に見落としがちな9つの要素を整理していきます。

3-1 家賃補助

もっともインパクトが大きいのが家賃補助です。たとえば月5万円の補助があれば年間60万円。税金がかからないケースも多いため、同じ60万円の昇給より価値が高いこともあります。

3-2 社宅制度

社宅は家賃補助よりさらに強力な場合があります。本来10万円の家に自己負担3万円で住めるとしたら差額の年間84万円はかなり大きい数字です。ただし、制度が終了すればその分は実質的な減給になる点には注意が必要です。

3-3 企業型確定拠出年金

会社があなたのために毎月積み立ててくれる老後用の貯金制度です。例えば会社が毎月1万円を拠出してくれると年間12万円。10年で120万円、20年なら240万円になります。しかも積立時、運用中、受取時に税制優遇があるため、普通にもらうより“減らずに増えやすい”お金です。原則60歳まで引き出せないデメリットはありますが、強制的に老後資産を作れる強力な報酬です。

3-4 持株会奨励金

持株会で会社が10%上乗せしてくれる場合、毎月2万円積み立てれば会社が2,000円プラスしてくれます。年間で24,000円。小さく見えますが、長期で見ると大きな差になります。

3-5 みなし残業

これはプラスではなく、“注意すべき要素”です。「固定残業40時間分含む」と記載されている求人票の年収は、その時間働く前提の金額です。もし毎月40時間残業しているなら年間480時間。この時間をどう考えるかで実質的な価値は大きく変わります。

3-6 リモート可

リモートワークが可能な会社は、通勤時間が減り、交通費以外の出費が減り、副業や自己投資の時間が増えます。通勤往復1時間なら年間240時間。これは大きな“時間資産”です。

3-7 交通費

当たり前のように感じますが、支給がなければ自己負担です。月2万円なら年間24万円となり、これも立派な実質年収の一部です。

3-8 昼食補助

1日500円の補助が出ると仮定すると、月20日で年間12万円になり、意外と家計を助けてくれます。

3-9 年間休日

年間休日115日と125日では10日も差があります。1日8時間とすれば約2週間分の労働時間の差になり、人生においては非常に重要な資産です。

これらを合計すると、年間で数十万円、場合によっては100万円以上の差が出ることもあります。しかし求人票には「年収〇〇万円」としか書かれていないため、自分で構造を見なければいけません。

第4章|実質年収の簡易計算方法

ステップ1:まずは額面年収を書く

求人票に書いてある年収を書き出します(例:年収550万円)。

ステップ2:プラスになるものを足す

会社が“肩代わりしてくれているお金”を足します。 ・家賃補助:月5万円 → 年60万円 ・企業型確定拠出年金:月1万円 → 年12万円 ・昼食補助:年12万円 合計84万円を足すと、実質年収は634万円になります。

ステップ3:マイナスになるものを考える

“時間”を考えます。例えばみなし残業が月40時間(年間480時間)の場合、時給を2,000円とすると480時間×2,000円=96万円の価値になります。634万円−96万円=538万円が時間まで考えた場合の実質年収のイメージです。

ステップ4:通勤時間も計算してみる

通勤往復1時間×年間240日=240時間。時給2,000円なら48万円。リモート可の会社ならこの時間が浮きます。

【A社 vs B社 実質年収の比較シミュレーション】

・A社:年収600万円(みなし残業月40時間、家賃補助なし、年間休日120日、リモート不可)

・B社:年収550万円(残業ほぼなし、家賃補助月5万円、企業型DC月1万円、年間休日125日、週3リモート可)

  1. 額面:A社600万円、B社550万円
  2. B社のプラス要素:家賃補助60万円+DC12万円=72万円 → B社は実質622万円(この時点でA社を超える)
  3. A社の時間価値:みなし残業40時間×12ヶ月=480時間。時給2,500円とすると120万円。600万円−120万円=実質480万円。
  4. B社の時間価値:週3リモートによる通勤削減で144時間×2,500円=36万円が浮く。

B社の実質価値は622万+36万円=約658万円。

最終比較:A社約480万円 vs B社約658万円(差は約178万円)。

額面では50万円差だったものが、実質では180万円近い差になります。

第5章|実質年収で転職戦略を組み立てる

5-1 伸びる業界に入る

どれだけ福利厚生が良くても、業界全体が縮小していれば将来的な年収の伸びは期待しにくいです。成長している業界であれば市場価値が上がりやすく、選択肢も増えます。実質年収は「今」だけでなく「将来」も含めて考える必要があります。

5-2 市場価値を上げる要素を持つ

資格、専門スキル、経験など、次の会社で高く評価される材料を持つことが欠かせません。「今の会社で評価されるか」ではなく「市場で評価されるか」の視点を持ちましょう。

5-3 上がりきる前に動く

「もう少し経験を積んでから」ではなく、実績がつき始めたタイミングや業界が伸びているタイミングで動くことで、実質年収は一気に跳ねます。

5-4 実質年収で会社を選ぶ

転職活動では必ず複数の選択肢を実質年収で並べて比較しましょう。「一番給料が高い会社」が必ずしも最適解ではないと気づけます。

5-5 未経験からでも可能か?

未経験でも考え方は同じです。最初の1年はきつくても、「成長する業界」「市場価値が上がる経験」「制度が整っている会社」を選べば実質年収は積み上がっていきます。

5-6 実質年収思考は武器になる

「年収はいくらですか?」ではなく、「家賃補助は?」「企業型DCは?」「平均残業時間は?」と聞けるようになることが、情報弱者から抜け出す第一歩です。

第6章|税金と社会保険を考慮した実質年収

6-1 年収が上がっても、手取りは比例しない

年収が500万円から600万円に上がっても、所得税・住民税・社会保険料も増えるため、手取りの増加は70〜80万円程度になります。額面の伸びと可処分所得の伸びは一致しません。

6-2 社会保険料は“静かに効いてくる”

給与に比例して増える社会保険料ですが、厚生年金は将来の年金額に反映され、万が一の保障にもなります。“消えるお金”ではなく将来への支払いでもある点をどう評価するかで実質年収の見方は変わります。

6-3 税金を考慮した比較の考え方

  1. 額面年収を見る
  2. 税金・社会保険料を引いて手取りを出す
  3. 福利厚生の価値を足す
  4. 時間価値を考慮する。

ここまでやって初めて“本当の比較”になります。非課税の家賃補助などを加えると単純比較が逆転することも多いです。

6-4 手取り思考に切り替える

企業は額面で語りますが、私たちは手取りで生きています。「手取りでいくらになりますか?」と一歩踏み込んで聞いてみましょう。

6-5 実質年収は“税引き後”で考える

本当の実質年収は、税金と社会保険を差し引いた「実際に使えるお金」を土台にし、その上で非課税の福利厚生、将来の制度、時間価値を加味したものです。

6-6 年収アップの落とし穴

年収が一定ラインを超えると手取りの伸び率は鈍化します。単純な年収競争よりも、どのレンジで戦い、どの制度を活用するかの方が効率的です。

第7章|共働き世帯の実質年収設計

7-1 世帯年収は「足し算」ではない

結婚やパートナーとの生活では、税金、保育料、社会保険料、世帯の働き方など、すべてが世帯単位で動きます。年収が高くなるほど累進課税で税率は上がり、各種補助の基準にも影響するため単純な足し算にはなりません。

7-2 フルタイムか、時短か

額面上の世帯年収が高くても、保育料や通勤時間、疲労によるコストを考慮すると、片方が時短勤務などで時間を確保した方が実質的な可処分額や生活の質が上がる場合もあります。

7-3 ケース|世帯年収1,000万円 vs 920万円、どちらが豊か?

・ケースA(フルタイム共働き):世帯年収1,000万円(手取り780万)−保育料や外注費等=実質可処分額約608万円

・ケースB(片方時短勤務):世帯年収920万円(手取り720万)−諸経費=実質可処分額約639万円

額面ではAが上ですが、自由に使えるお金や時間的余裕を考慮するとケースBの方が多いというケースもあります。世帯年収が高いことと幸福度が高いことは必ずしも一致しません。

7-4 片方の福利厚生を最大活用する

共働きの場合、両方が同じ強みを持つ必要はありません。一方が“福利厚生特化型”、もう一方が“年収特化型”という分担のほうが世帯最適になることがあります。

7-5 扶養という視点

「年収の壁(103万、106万、130万円など)」をどう考えるかで世帯の実質年収は大きく変わります。短期的な最適と長期的なキャリア形成のバランスが重要です。

7-6 世帯で考えると“攻め方”が変わる

一方がベンチャーで年収アップを狙い、もう一方が大企業で安定と福利厚生を確保するなど、世帯全体でリスク分散と安定性を取る「構造で考える」視点が大切です。

第8章|地方移住という選択肢 〜収入を上げずに実質年収を上げる〜

8-1 同じ年収でも、生活はまったく違う

東京と地方都市では、家賃や通勤費、物価に大きな差があります。例えば家賃だけでも年間約100万円の差が出れば、それは年収100万円アップと同じ効果であり、税金も増えません。

8-2 リモートワークが生んだ構造変化

「本社は東京、居住は地方」という働き方により、都市の給与水準×地方の生活コストという掛け算が可能になりました。

8-3 地方移住のリアルな数字

同じ年収600万円でも、東京で生活して貯蓄余力50万円のところ、地方で生活費を抑えれば貯蓄余力が150万円になり、10年で1,000万円の差が生まれます。

8-4 地方移住のメリット・デメリット

住居が広く通勤時間が短いなどのメリットがある一方、転職市場が狭いなどのデメリットもあります。フルリモート可能か、スキル市場価値が維持できるかを事前に設計することが重要です。

8-5 地方移住は“効率最大化”の戦略

年収を700万円に上げるのは難しくても、固定費を年間100万円下げるのは工夫次第で可能です。縦の競争(年収アップ)で消耗するより、横の発想(生活コスト削減)の方が再現性が高くなります。

最終章|お金ではなく「構造」でキャリアを選ぶ

あなたは何でキャリアを選びますか? 年収、会社の知名度、安定。これらはすべて「表面の数字」です。本当に見るべきなのは、その数字を生み出している“構造”です。

競争する場所を間違えない より高いポジションへ進む“縦の競争”は消耗しがちです。しかし、非課税制度の活用、企業型DC、家賃補助、世帯分業、地理戦略といった“横の工夫”は、知っているかどうかだけで大きな差が生まれます。

実質年収とは「自由度」の指標 実質年収の計算の目的は、単に数字を増やすことではなく、どれだけ人生の選択肢(辞められる力)が広がるかです。理不尽な環境を我慢しなくていい、自由度の数値化こそが実質年収です。

構造思考の3つの質問 これからキャリアを選ぶときは、次の3つを自分に問いかけてみてください。

① その会社の制度は、自分に有利に働くか?

② 世帯単位で見て、最適か?

③ 住む場所を含めて設計できているか?

感情ではなく構造で選ぶことで、キャリアのブレは確実に減ります。

最後に 世の中の多くの人は、年収というラベルでキャリアを選びます。でもあなたは今、その“中身”を見る視点を持っています。転職するとき、会社を比べるとき、働き方を見直すときは、一度だけ立ち止まってこう問いかけてみてください。

「この選択は、構造として有利か?」

この文章が、あなたのキャリア設計の“ものさし”になれば嬉しいです。

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✍️ この記事を書いた人

大塚 雅仁|キャリア戦略研究所

高卒・地方の自動車工場勤務から32歳で一念発起し、未経験でIT業界へ転職。

転職と同時に地方から上京。

SES企業でのSalesforce研修・プリセールス経験を経て、現在は事業会社のDX推進担当としてSalesforceを活用した社内DXに従事。

実体験ベースの「リアルで嘘のないIT転職・キャリア戦略」をブログ・note・Xで発信中。

LinkedIn: https://www.linkedin.com/in/masahito-otsuka-4b6633403/

X(旧Twitter): https://x.com/thknihp6k5huxil?s=11

ブログサイト: https://career-shift-net.com/

note: https://note.com/tokyo_real

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